装束稲荷神社の本堂の脇にある狐は鍵をくわえています。
ここから蜀山人は
「いざあけんゑびや扇屋とざすとも 王子の狐かぎをくわえて」
と、詠んだそう。
装束稲荷神社にその歌の石碑があります。
ゑびや扇屋って何だろう、と思った編集員B、早速調べてみましたよ。それではいってみましょう!
装束稲荷神社の記事はコチラ↓
扇屋って?
扇屋は三代将軍家光の時代である1648年創業の料理屋。農業に従事するかたわら掛茶屋をしていたのが始まりで、のちに料理屋になりました。
遡ること数十年前。徳川家康公により、王子稲荷神社および王子権現(現・王子神社)の別当寺(べっとうじ=神仏習合のもと神社を管理するために置かれた寺)であった金輪寺に中興宥養(家康と昵懇の間柄の高僧)が招かれてから、王子稲荷神社の人気は大爆発。たくさんの江戸市民が参拝する神社となりました。
扇屋が創業したころには王子稲荷神社や王子神社の参拝客が増加したことに伴い、人々が休憩するための掛茶屋が増え、やがて料亭となったのでしょうね。
江戸時代の王子扇屋を書いた絵。立派な望楼があります。目の前に広がる石神井川(音無川)をはさんだ対岸に立派な庭園があったそうです。
出典:歌川広重「江戸高名会亭尽 王子」 国立国会図書館蔵
海老屋は扇屋の親戚が近くで経営していた料理屋。時の料理番付にもたびたび登場するほど有名な料理屋だったそうです。現在は海老屋はありません。
現在の扇屋
扇屋は十数年前に料亭をやめ、現在はJR王子駅を出て徒歩1分のところにある持ち帰り専用の厚焼き卵の専門店となっています。
場所はコチラ。
JR王子駅の中央改札を出たら左折。音無川にぶつかると右折します。
最初の角を左折すると左側にこじんまりとした店舗が見えます。
扇屋の卵焼きは日本橋高島屋でも買えます
編集員Bは日本橋高島屋のレトロな感じが大好きで毎週通っていたんですが、王子扇屋があることを発見してビックリ。
日本橋本館地下1階の食品売り場にお店があります。フロアガイドはコチラ。
惣菜屋「まつおか」を背にして左斜め前にお店があります。ショーウィンドーの扇のマークが目印。
ということで日本橋高島屋の扇屋で厚焼き玉子650円(税抜)を購入!
ふたを開けるとお出汁の香りがふんわり漂います。これは美味しいに決まってる!
カットしてみると、卵がいくつも層になっていて丁寧に作られていることを実感。
頬張ってみると、やっぱり美味し~!
お出汁がじゅわっと口の中に広がります。国産たまごの風味もまろやか。思ったよりも甘すぎないのがまたいい。
卵焼きというより小麦粉を使っていないカステラ、という感じかな。
半分はそのまま、半分はお醤油をちょっとつけてぺろりと食べちゃいました。
落語「王子の狐」にも扇屋は出てくるよ
扇屋は、落語「王子の狐」の舞台にもなっています。
男が若い娘に化けた狐に声をかけ、一緒に扇屋でごちそうをたらふく食べ、酒に酔った狐が寝込んでしまった間に男が逃げ出し狐にお代を払わせたお噺。最後の狐のセリフが落ち。もちろん扇屋名物の卵焼きも出てきます。
最後に
王子扇屋の厚焼き玉子は華やかな江戸を伝える江戸の文化なんですね。王子の歴史の深さにますます魅入られてしまいました。
次はひき肉と三つ葉を使った親子玉子を食べるぞー!